アフリカを含む途上国では作った農作物の最大50%が消えてしまう、、、他2つ

Shigeomi_SATO2011-08-31

持続可能な開発・気候変動・農業・環境などのテーマに取り組むTHE WORLDWATCH INSTITUTEが今年1月に発表したレポートState of World 2011。アフリカの農業についての数字をいくつかピックアップしました。イタリックの部分が私のコメントです。
(写真は、ケニアでの農業ファイナンスの看板広告)

低所得国で収穫される農産物のうち、25〜50%は廃棄もしくは病気にかかってしまい、消費されずに終わってしまう

国連食糧農業機関(FAO)によれば、この損失額は年間40億ドルにも上るといわれています。これは逆に言えば、倉庫をはじめとした物流インフラを整備することで、今の栽培方法・生産性のままでも供給量は1.3〜2倍に拡大することができるということ。いい保存方法を提供できる機械・サービス・施設があれば、それを農家にリース・レンタルで利用してもらうことで、農家はリース・レンタル料以上に収入が増えて、リース・レンタル業者もビジネスができる、という構図があり得る。具体的には、穀物乾燥機がアフリカの一部ではブームになりつつあります


アフリカの農業における水の問題は、降水量の問題ではなくて、降った水の管理の問題

  • アフリカでは、農地に振る雨のうち15〜30程度しか農作物栽培に生産的に利用されていない
  • 土壌が劣化しているとこの比率は5%にまで落ち込む)
  • したがって灌漑が重要になるが、灌漑が整備されている農家の割合は極めて低い
  • また同時に、水を無駄に利用しているケースもあり、土壌や水を節約して有効利用することで単位当たり収量がメイズで20〜120%増加した例もある

週刊アフリカビジネス第15号でも紹介したとおり、アフリカは全体としてみれば決して降水量に乏しい地域ではなく(人口一人当たりの降水量・河川流水量は旧ソ連や南米よりも高い)、問題なのはそれを有効利用できていないことです


都市農業も重要な位置づけを持つ。全世界で8億人が都市部での農産物に依存。今は都市農業従事者の大半はアジアであるが、アフリカでは毎年1,400万人が農村から都市部に移住してきており、都市部の農業が今後アフリカでも重要になっていく

都市部での園芸用品需要、農業ファイナンス需要、農業情報提供サービス需要などが高まる可能性があります。なおアフリカでは農業生産者の75%は女性で、その多くが1日1.25ドル以下で生活。農業ファイナンスを受けられるのは全体の10%程度にとどまっているといわれています


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成長するアフリカ市場には、世界中の企業が進出を始めています。現地のニーズを把握し、製品開発を行い、流通を抑えるなどのプロセスに時間がかかります。先行者が長い時間をかけて築いた流通網、製品ニーズ、人材などを後発者が逆転するのは容易ではありません。一方で、何の情報も持たずに拙速に参入すれば、いたずらに企業体力を消耗することになります。

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南スーダン政府が貿易・投資セミナーの開催を予定

独立したばかりの南スーダン政府が、今年10月に貿易・投資カンファレンスを開催することが明らかになりました。

独立したばかりで、一部では武力紛争も残り、インフラは全くの未整備でリスクも高い。そんな中で貿易・投資なんて無理だろう、という見方もあると思いますが、一方でその分チャンスも大きいといえます。

先日のニュースレターでお伝えしたとおり、日本タバコが現地たばこ会社を買収したり、米国企業が大規模に農地買収をしたり、ケニアの銀行が支店を構えていたり、世界的なビール企業が南スーダンを狙って工場建設を始めたり、石油を北のスーダンを経由せずに輸送するためのパイプライン計画が始動したりと、先行者利益を巡る争いはすでに始まっています。

http://www.howwemadeitinafrica.com/south-sudan-investment-event-looking-to-lure-foreign-firms/11869/


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アフリカビジネスを見る10のキーポイント

格付会社Fitch発表のレポート「Sub Saharan Africa: Outlook and Challenges」について記載した記事の内容と私の所感をまとめてみました。参照した記事はこちら。
http://www.howwemadeitinafrica.com/africas-economy-ten-key-issues-to-consider/11806/
(以下、「※」以降に私の所感を書いています。)

1.Strong Performance:金融危機で2009年の成長率は2.8%に低下したものの2010年は5%に回復。不況ではなく、成長減速にとどまったのは、この地域以外ではアジアと中東北アフリカ地域のみ

※今後は、アフリカ東部諸国地域の食料不足に伴うインフレがどこまで長続き、波及するかがポイントになると見ています。現在アフリカのインフレ率は「東高西低」状態です。東部諸国はインフレ率が軒並み高く、最新の発表だとケニアが15.5%、ウガンダ18%、エチオピア39%となっています。一方アフリカ西部は落ち着いていて、西アフリカ諸国中央銀行加盟国の平均は3.9%、ナイジェリア9.4%、ガーナ8.39%など。これ以外では、個人的な関心として、ジンバブエの2011年実質成長率が、当局発表の9%になるのか、IMF予測の5%台になるのかも気になるところ。


2.The China Factor:2000年以降、貿易と投資の両面で中国の役割が拡大。2009年のアフリカからの輸出の14%が中国向け。主に石油と鉱物資源だが、木材と綿花も

※天然資源以外でも中国企業といえば、通信系のHuawei(華為・ファーウエイ)やZTE、家電のHisense(海信・ハイセンス)、銀行の中国工商銀行(アフリカ最大の銀行である南アフリカ・スタンダードバンクの最大株主)などが積極的にビジネスを展開。


3.Mineral Resources:アフリカ経済において、以前から重要な位置づけを持つ天然資源。新たな動きとしては、マラウイのウラン、レソトのダイヤモンド、スーダンの石油、チャドの石油、ギニアボーキサイト・金、シエラレオネボーキサイト・ダイヤモンド、ガーナの石油、ウガンダの石油

※付け加えるとすれば、タンザニアのガス、モザンビークのガス・石油、リベリアの石油なども要注目。


4.Rising Domestic Demand:中間層を始めとした所得水準の向上に伴う需要増

※カウントの方法ににもよりますが、一日2ドル以上(購買力平価ベース)で見ると、アフリカ人口の4割が既に中間層。


5.ICT improving productivity:携帯を始めとした通信技術の進歩・普及による生産性の向上

※アフリカの携帯利用人口はざっくり5億人と覚えておけばOKです。携帯を活用した生産性向上については、特に農業、金融分野でインパクトがあります。IT・モバイル関係の起業家も増えつつあります。


6.Easier to do business:経済開放・自由化を目指した規制緩和により、ビジネス環境が改善

※先日の週刊アフリカビジネスでも紹介しましたが、アフリカ東部地域のビジネス環境は、各国のベストプラクティスを組み合わせれば日本に匹敵するほど。


7.Regional Integration:地域統合により、規模の経済が効くようになる。インフラや関税の廃止など残る課題も多いものの、政府は問題を認識し、徐々に改善に向かっている

※既にアフリカ西部では通貨統合が実現していますが、アフリカ東部でも今後はこの動きが加速しそうです。アフリカには数多くの地域共同体があるのですが、これを全部統合しようという動きも出てきています。


8.Infrastructure holding back growth:インフラ整備が需要に追い付いていない。電力不足は一般的で、道路や鉄道の未整備は貿易の足かせ。一方で、債務削減と中国マネーによりインフラ投資は拡大。

※住民レベル、国レベルで「金は払うからインフラを整備してくれ」という状態になり、回収リスクの下がっている国もあります。アフリカの民間大規模インフラ投資としては、ナイジェリア、ケニア南アフリカの電力セクターが筆頭という印象。それ以外にも多くの国で民間参加型のインフラプロジェクトはあります。


9.Corruption:改善しているものの、いまだに世界最悪水準の汚職。一方で、南アフリカナミビアボツワナモーリシャスセーシェルルワンダ汚職度が低い

※これは本当になかなか解決しない問題ですが、ここに記載されている国はかなりクリーンです。ケニア、ナイジェリアといった、アフリカの中でも地域のハブになる大国がクリーンになると一気に投資が加速すると思うのですが、経済規模が大きいだけに絡む利権も大きい。


10.Cautiously optimistic:過去10年に比べればサブサハラ地域の見通しは明るいが、投資、生産性、雇用の押し上げには、インフラやガバナンスの不足、投資環境の未整備といった問題の解決が必要。

※あまり楽観的になってはイカン、というアフリカ諸国政府へのメッセージでしょう。




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アンゴラの物価高とその背後にある急成長

日本のIT企業のエンジニアによるアンゴラ出張の記録です。アンゴラの物価の高さが伝わってきます。
http://blogs.itmedia.co.jp/narisako/2011/08/post-822c.html

首都ルアンダは、駐在員にとって世界一コストの高い都市として知られています。
ピザ1枚5,000円、といった都市伝説もあります。(数年前までは本当にそうだったようです)
http://www.mercer.com/press-releases/1311145

なぜそれほどコストが高いのかといえば、お金を持った多国籍企業が続々と進出している一方で、供給が追い付いていないためです。

なぜ多国籍企業の進出が続くのか?アンゴラは、原油資源を背景に急速に経済成長を遂げています。最近は減速していますが、2005年以降の経済成長率は驚異的です。これが、多国籍企業の進出が続く理由です。

アンゴラ実質経済成長率(IMF統計)
2005年:21%
2006年:19%
2007年:24%
2008年:14%
2009年:2%
2010年:2%

また今後も、堅調な成長が見込まれています。
2011年:8%
2012年:10%
2013年:7%

人口もつい最近発表された統計で2000万人を突破しました。
http://www.afriquejet.com/population-angola-2011080419930.html

同国はポルトガル語圏ということもあり、経済発展の著しいブラジルからの投資も増えてきています。それを受けて、ブラジルの投資促進機関もアンゴラに事務所を構えるほどです。

投資分野も、資源関係のみならず、セメント、衣料、農業、インフラ、製造業、ITなど確実に種類は増えつつあります。(セメント、衣料分野では日本企業もビジネスをしています。セメントは双日、衣料(繊維)は丸紅がそれぞれプラントを納入。)

政治も安定しています。現職のドス・サントス大統領は、既に31年在位についています。2012年に選挙が行われる予定で、その後5年×2期=10年間は大統領に居座ることが可能です。独裁、といえなくもないですが、少なくとも2021年までは政権が安定するとされており、アフリカ最大の銀行であるスタンダードバンクも「アンゴラの政治リスクは低い」としています。
http://www.howwemadeitinafrica.com/political-risk-in-angola-is-limited-says-standard-bank/6993/

政治が安定し、価格が高騰する資源があり、経済が成長。その成長をターゲットに、資源以外の分野でも投資が増えているとなれば、同国は当面高成長が期待できると考えています。

ケニアで教科書のインターネット上での配布プロジェクトが始動

ケニアにおいて、中等教育機関向けに、教科書をオンラインでシェアするというプロジェクトが、ケニア政府、ベルギー政府、日本政府の主導で始まりました。
(以下の記事では、「ケニア・ベルギー・日本のプロジェクト」とあるのですが、現地で教育関係の仕事に携われている方からの情報で、日本政府は今回のプロジェクトには直接的には携わっていないということでした。)

以下の記事の教育大臣のコメントにもあるとおり、ケニアでは教科書代を支払うのが大変な生徒が多いので、一定程度の質が保てる教科書がネットでシェアされるというのは大きな意義があります。これが成功すれば、アフリカでのインターネットの教育利用がさらに加速しそうです。

http://www.shulebora.com/2011/08/11/free-online-text-books-and-past-papers-for-secondary-schools/
http://www.balancingact-africa.com/news/en/issue-no-567/internet/kenya-schools-to-sha/en
なおアフリカでは既に、SMSを利用した情報提供サービスが盛んです。具体的には、エイズ教育や、簡単な数学のドリル、農業情報、医療関係者向けのアドバイスなどが配信されています。

欧州の大企業は理解している、アフリカ中間層向けビジネスの魅力とは?

アフリカの様子をつづった写真集のフランス人作者へのインタビュー記事。
http://www.howwemadeitinafrica.com/interview-thinking-about-africas-middle-class/11685/

インタビュアーが「アフリカでのビジネスを視野に入れている欧州企業へのメッセージは?」と問うと、以下のような答えが。

「(欧州の)大企業は、その多くがアフリカの中間層向けで何が期待できるかを理解していると確信しているので、彼らに対していうことは何もない。私のメッセージはむしろ個人事業主や小規模企業に対するものとなるだろう。アフリカの多くの国は投資家にとって完璧な組み合わせを持っている:中間層が購買力を持ち始め、多くの財・サービスを必要としている。またメディアによるアフリカへのネガティブなイメージから未だ競争は激しくない。そしてアフリカは若く、独創性の高い、豊かな労働供給力を有している」

中間層向けの事業機会が広がっているということは、欧州の大企業はきちんとわかっている(だからこそ多くの企業が実際に進出しているわけですが)。この言葉を、そっくり日本の大企業に伝えてあげたいものです。

ナイジェリアでの深刻な原油汚染。除去には一体いくらかかるのか?日本企業にとっての機会は?

国連環境計画が、1960年代から今に至るまで続いている、ナイジェリア南西部のナイジャーデルタ地帯のOgonilandにおける原油汚染の実態と必要な汚染除去の規模を発表しました。レポートは、こちら。現地の写真は、こちら。

なおこれはナイジャーデルタ地帯の一部なので、ナイジェリアのオンショア石油開発による原油汚染の全体では、もっと金額が大きくなるのは間違いありません。(Ogoniland以外は今回のレポート対象外)

ナイジャー「デルタ」地帯というくらいなので、現地は川、湿地帯、マングローブ地帯になっています。しかし原油汚染の影響で、かなり前から魚は獲れず、健康被害も出ています。飲料水については、川からは取れないので4時間歩いて確保するという人もいる模様。

また井戸水で飲料水を確保するケースもあるようですが、原油流出の影響で地下水脈も汚染されているため、中にはベンゼンが安全基準の900倍にも達しているケースがあるようです。

原油流出の原因について、シェルはその多くを現地武力勢力の襲撃や収奪によるものだとしていて、一方で地元住民や人権団体は機器不良だとしています。

現地で操業しているシェルは2008年〜2009年に起きた原油流出については、現地の法律にのっとって責任を取るとしていますが、それ以外については言及がなされていない模様です。正直かなり腹立たしいですが、現地の法律的にはここまでが限度なのかもしれません。(法律を変えればいくらでも過去に遡って補償を要求することはできるでしょうが、現地の石油利権関係政治家の存在を考えると、残念ながら非現実的でしょう。)

この汚染除去作業は、「世界最大、最長期間にわたる」ことになりそうで20年以上かけて、総額10億ドルが必要と発表されています。この作業に向けては、国や石油会社が基金を設立するはずです。水質改善技術を持つ日本企業があれば、これはビジネス的にも、人道的にも大きな意味のある事業になりそうです。