アフリカビジネスを見る10のキーポイント

格付会社Fitch発表のレポート「Sub Saharan Africa: Outlook and Challenges」について記載した記事の内容と私の所感をまとめてみました。参照した記事はこちら。
http://www.howwemadeitinafrica.com/africas-economy-ten-key-issues-to-consider/11806/
(以下、「※」以降に私の所感を書いています。)

1.Strong Performance:金融危機で2009年の成長率は2.8%に低下したものの2010年は5%に回復。不況ではなく、成長減速にとどまったのは、この地域以外ではアジアと中東北アフリカ地域のみ

※今後は、アフリカ東部諸国地域の食料不足に伴うインフレがどこまで長続き、波及するかがポイントになると見ています。現在アフリカのインフレ率は「東高西低」状態です。東部諸国はインフレ率が軒並み高く、最新の発表だとケニアが15.5%、ウガンダ18%、エチオピア39%となっています。一方アフリカ西部は落ち着いていて、西アフリカ諸国中央銀行加盟国の平均は3.9%、ナイジェリア9.4%、ガーナ8.39%など。これ以外では、個人的な関心として、ジンバブエの2011年実質成長率が、当局発表の9%になるのか、IMF予測の5%台になるのかも気になるところ。


2.The China Factor:2000年以降、貿易と投資の両面で中国の役割が拡大。2009年のアフリカからの輸出の14%が中国向け。主に石油と鉱物資源だが、木材と綿花も

※天然資源以外でも中国企業といえば、通信系のHuawei(華為・ファーウエイ)やZTE、家電のHisense(海信・ハイセンス)、銀行の中国工商銀行(アフリカ最大の銀行である南アフリカ・スタンダードバンクの最大株主)などが積極的にビジネスを展開。


3.Mineral Resources:アフリカ経済において、以前から重要な位置づけを持つ天然資源。新たな動きとしては、マラウイのウラン、レソトのダイヤモンド、スーダンの石油、チャドの石油、ギニアボーキサイト・金、シエラレオネボーキサイト・ダイヤモンド、ガーナの石油、ウガンダの石油

※付け加えるとすれば、タンザニアのガス、モザンビークのガス・石油、リベリアの石油なども要注目。


4.Rising Domestic Demand:中間層を始めとした所得水準の向上に伴う需要増

※カウントの方法ににもよりますが、一日2ドル以上(購買力平価ベース)で見ると、アフリカ人口の4割が既に中間層。


5.ICT improving productivity:携帯を始めとした通信技術の進歩・普及による生産性の向上

※アフリカの携帯利用人口はざっくり5億人と覚えておけばOKです。携帯を活用した生産性向上については、特に農業、金融分野でインパクトがあります。IT・モバイル関係の起業家も増えつつあります。


6.Easier to do business:経済開放・自由化を目指した規制緩和により、ビジネス環境が改善

※先日の週刊アフリカビジネスでも紹介しましたが、アフリカ東部地域のビジネス環境は、各国のベストプラクティスを組み合わせれば日本に匹敵するほど。


7.Regional Integration:地域統合により、規模の経済が効くようになる。インフラや関税の廃止など残る課題も多いものの、政府は問題を認識し、徐々に改善に向かっている

※既にアフリカ西部では通貨統合が実現していますが、アフリカ東部でも今後はこの動きが加速しそうです。アフリカには数多くの地域共同体があるのですが、これを全部統合しようという動きも出てきています。


8.Infrastructure holding back growth:インフラ整備が需要に追い付いていない。電力不足は一般的で、道路や鉄道の未整備は貿易の足かせ。一方で、債務削減と中国マネーによりインフラ投資は拡大。

※住民レベル、国レベルで「金は払うからインフラを整備してくれ」という状態になり、回収リスクの下がっている国もあります。アフリカの民間大規模インフラ投資としては、ナイジェリア、ケニア南アフリカの電力セクターが筆頭という印象。それ以外にも多くの国で民間参加型のインフラプロジェクトはあります。


9.Corruption:改善しているものの、いまだに世界最悪水準の汚職。一方で、南アフリカナミビアボツワナモーリシャスセーシェルルワンダ汚職度が低い

※これは本当になかなか解決しない問題ですが、ここに記載されている国はかなりクリーンです。ケニア、ナイジェリアといった、アフリカの中でも地域のハブになる大国がクリーンになると一気に投資が加速すると思うのですが、経済規模が大きいだけに絡む利権も大きい。


10.Cautiously optimistic:過去10年に比べればサブサハラ地域の見通しは明るいが、投資、生産性、雇用の押し上げには、インフラやガバナンスの不足、投資環境の未整備といった問題の解決が必要。

※あまり楽観的になってはイカン、というアフリカ諸国政府へのメッセージでしょう。




========================
アフリカの成長を、遠くから眺めているだけで満足ですか?

「週刊アフリカビジネス」は日本で唯一のアフリカビジネス定期メディアとして1か月でアフリカビジネスニュース80本、業界・企業分析1本をお届け

「週刊アフリカビジネス」登録はこちらから。1か月1,575円ですが、登録月は無料。新規購読お申込みの方には、「アフリカビジネスの可能性、よくある思い込み、進出までの3ステップ」をまとめたレポートをプレゼント