模倣犯

読み終わりました。

総合的な評価という意味では、5段階で4.5くらいかなー。

以下、思いついたことをぱらぱらと書きます。
・読みながら自分の中で浮かび上がってきた本書のキーメッセージは、「拡大した自己イメージと現実とのギャップは精神崩壊を引き起こすことがある」「物事を正しく認識することは、言うほど簡単ではない」「辛いことがあったときには、大変でも正面から向き合うべきである」の3点
 ①自己拡大した自己イメージと現実のギャップは、精神崩壊を引き起こすことがある
  自分の思い描いている自分の「あるべき」イメージの世界が、本当の自分の姿よりも大きくなってしまうと、そのうち、本当の自分の姿を認識しないようになり、イメージの世界でしか生きられなくなる。しかし、現実の中で生きていく以上、そのギャップには必ず直面するわけであって、このギャップが大きい場合には、精神崩壊を引き起こすことがある
  恐ろしいのは、自分は、自分がイメージの世界で生きているのか、現実の世界で生きているのかというのは、本人にはわからないという点。周りから見ると、思い込みとしか思えないような思考に陥っていることって、結構良くあることだと思うので、「今の自分としてのありたい姿」と「今の自分の現実の姿」を常に意識することが大事だと思います。なんだか、自分がちょっと成功したからって、いい気になっていないか?とか、逆に自分がちょっと失敗したからって、必要以上にへこんでないか?とか。
 ②物事を正しく認識することは、言うほど簡単ではない
  そもそも、認識とは本質的に相対的なものなので、同じものを見ても違う人が見れば、もしくは同じ人が違う時点で見れば、認識は異なる。だけど、そのことを意識しないと、見たもの=真実となってしまったり、自分の信じたいようにものが見えてしまう。その点は、常に意識する必要がある
  これは、今のコンサルティングにまさしくそのまま活きるところで、何が分かっていて、何が分かっていないのか?分かっているというのは、誰の立場で、どういう前提条件の下で、それが「分かっている」といえるのか?ということを厳密に区別しないといけない
 ③辛いことがあったときには、大変でも正面から向かい合うべきである
  現実から、飛躍したり、横道ににげたりしても、一向に物事は解決しない。
  よく、「傷心旅行」とか「落ち込んでるけど、パーッと飲んでわすれちゃおう」みたいな営みってあるけど、こんなことで人の心は代わらないと思う。あくまで、辛くても正面から向き合って、それを自分で乗り越えることが唯一のあるべき姿じゃないかと思う。もちろん、ある程度自分の中で整理がついて後に、背中を押してあげるという意味で、こういう営みをするというのは意味があると思うのだけれど。
  必要以上に現実的にならず、必要以上に非現実的にならず、まずは、事象をきちんと見てあげることが大事。これは、②で言っていることですが。必要以上に現実になること(=醒めた目で見る)とか、必要以上に非現実的になる(=悲劇のヒーローを演じる)というのは、比較的簡単だけど、それでは突破口は開けない。難しいのは、そうやって極端にどちらかに振るのではなくて、バランスをきちんと見極めることだと思う。

(②③に関しては、物事や、自分の今の立ち位置を確認するために、敢えて極端に立場を振ってみて考えてみる、というのは有効なやり方ですが、それはあくまでバランスのいいところを見極めるためのツールとしての位置づけ)

①が自分の内に対する自己認識、②が自分の外に対する自己認識、③は自分の内と外のバランスに対する自己認識、と言い換えることが出来ます。

こうしてみると、①②③の全てに関して、程度の差こそはあれ今の自分に関連するメッセージなので、きっと同じ本を読んでも別のシチュエーションだったら、別のキーメッセージが浮き上がってくるんだろうなぁと思いました。

・全体のストーリー構成。すばらしい。毎日、夜遅く帰ってきても、先が読みたくて睡眠時間を削って読んでしまうほど、面白い。最後のほうとか、本を読みながら「マジかよ!?」と声に出してしまったくらい。巧い。。。

・ただ、ちょっと長すぎ。。。これは完全に好みの問題ですが、長くて面白い作品よりも、短くて面白い作品のほうが好きなので、マイナス0.5点です。でも、トータルでは、秀逸と言っていいと思います。

さて、明日から、別の本を読むぞーっと。