「IBMはフラットになる」に関連した一考察②

ということで、先週土曜日に書いたことの続きです。
先週土曜日のキーメッセージは、以下です。

・今後、リソースのグローバルレベルでのフラット化により、システム開発プロジェクトにおける日本のIT企業の活動領域は大幅に縮小する
 ・企業規模の面では、日本企業に残される活動領域は、大規模企業におけるシステムほど小さく、中規模企業ほど大きい
 ・プロジェクトフェーズの面では、日本企業に残される活動領域は、上流ほど大きく、下流ほど小さい

今週のテーマは、
「このような状況下で、日本のIT企業のSE、プログラマはどのように行動すべきか」
です。

結論は
「最終的な活躍ステージを以下の4つに絞って、キャリア開発を行う。1.営業・コンサルフェーズにさかのぼる、2.システムのライフサイクル全体で面倒を見る、3.超一流SE・プログラマになる、4.全く別の業種に移る」
です。

まず、全体の潮流として、設計フェーズ以後の技術コモディティ化、インターネットの拡大・低廉化による技術の物理的流動性の拡大が根底にあります。そのことから、設計フェーズ以降で、高賃金で普通の技術を提供するというビジネスは、今後成立しなくなる傾向が強い。要は、車の部品と同じで、高い料金で、普通のねじを作ってても、売れなくなってしまうわけです。ここまでが、前回の話。

それでは、逆にビジネスとして成立させるには?と考えてみると。

1.とりあえず、成立しないと言われているところをひっくり返して付加価値を出す
 1.1.「設計フェーズ以降で」→「設計フェーズより手前」→「営業・コンサルフェーズで勝負」
 1.2.「高賃金」→「低賃金」
 1.3.「普通の技術」→「普通じゃない技術」

2.成立しないと言われているところを、単体でなくて複数で纏め上げるところで付加価値を出す。もしくは、今は無いものをくっつけて付加価値を出す
 2.1.フェーズ単位での纏め上げで付加価値を出すのは?
 2.2.個人単位で考えてるけど、それを纏め上げるところで付加価値を出すのは?
 2.3.顧客企業と自社(開発企業)で分けて考えてるけど、それを纏め上げるところで付加価値を出すのは?

この6つくらいが論点として出てくるかと思います。以下、それぞれについて、実行可能性を評価します。

1.1.「設計フェーズ以降で」→「設計フェーズより手前」→「営業・コンサルフェーズで勝負」
ま、普通の考え方ですよね。出来なくないし、ここは長期的に見てもある程度はパイが残るところだと思うので、悪くないと思う。
ただし、コンサルフェーズ(って自分がいるところですが)に関して言えば、もうすでに日本企業の影って薄い気がします。あと、そもそものパイが小さいので、競争は相当熾烈。

1.2.「高賃金」→「低賃金」
無理でしょう。日本じゃ。

1.3.「普通の技術」→「普通じゃない技術」
要するに、匠になれと。これは、可能ですよね。本当に好きな人なら出来ると思うし、今でもやってると思うし。
ちょっと話が飛びますけど、googleとかは完全にここで勝負してますよね。

2.1.フェーズ単位での纏め上げで付加価値を出すのは?
最上流から最下流、そして次の最上流へ、、、と顧客のシステムライフサイクル全体を通して、顧客のパートナーになれるようにする。
ある意味、コンサルみたいなものです。CIOの相談相手というか。これは、もう技術だけじゃなくて、営業能力、ファシリテーション能力、などなど、相談相手として安心できる要素が全て備わらないとできないから、コモディティ化しづらいところだから、付加価値も高い。グローバルで人が入ってくるかも知れないですが、ここで勝負できるようになれば、高賃金でも大丈夫でしょう。

2.2.個人単位で考えてるけど、それを纏め上げるところで付加価値を出すのは?
人をまとめる仕事をする。これは、中国もインドもやってるからなぁ。というか、SEとかプログラマが中国人、インド人になった瞬間に、日本人がまとめるよりも、彼らがまとめたほうが、きっと効率はいいでしょう。

2.3.顧客企業と自社(開発企業)で分けて考えてるけど、それを纏め上げるところで付加価値を出すのは?
システムを作る側と使う側で分けてるのを、一緒にしてしまう。システム構築・維持をBPOしてもらう。2.1.に近いバージョンですが、2.1.は、システムの実際の構築・維持作業を行うわけではなくて、あくまでそれに対するアドバイスや投資判断の支援を行い、こちらは実際に構築・維持作業を行う。これこそまさに今中国、インドに持っていかれつつあるところ。なので、ここで勝負するのは、相当大変だと思います。

ということで、結論として、以下の3つが有望だと考えます。

・営業・コンサルフェーズで勝負
・普通じゃない技術で勝負
・システムのライフサイクル全体で面倒を見るところで勝負

どれについても共通して言えるのは、
・技術だけじゃダメ
・グローバルの潮流、最先端で何が起こっているかを常に把握することが必要
・競争は熾烈
ということですね。。。

そして、前回ちょっと書いたんですが、「国家として何をすべきか」という点ですが、書くことが少ないので、あっさり書いちゃいます。
「国家は、論理的思考力をしっかり身につけさせる基礎教育制度を構築すべき」です。

論点として、
1.国家としてビジネスに介入するとしたらどのような方法が適切か?
2.国家として、ビジネス以外に介入するとしたらどのような方法が適切か?
の2点があると思います。

1.に関しては、何やっても無駄、というのが結論。

1.はですね、どんな方法を取ろうとしても、要は、「国が少し助けてあげる」ということになるわけです。
ところが、日本に乗り込んでこようとしているやつらは、自由競争の中で、「生き残らないと、ヤバイ」というシチュエーションの中で勝ち残ってきて、これからもハングリーにがんばろうとしている。そんなやつらと勝負するのに、国の助けが無いとダメだ、なんていうんじゃ、そもそもお話にならないです。(注:これが、もし産業の勃興期で、とりあえず国家として資金を投入すれば、技術的にグローバルで見ても先行できる、とか、とりあえずグローバルのレベルに追いつこう、いう時期なら別ですが。)

2.に関しては、1.から導かれるところもあるのですが、「要は、人と文化を変えなきゃ、変わらん」ということ。
で、人と文化を変えるために、国が出来ることって何だろう、と思うと、「基礎教育」だと思うんです。そこで、きちんと、グローバルで勝負できるような人材を育て上げないとダメですよ、ということ。そのためには、きちんと、論理的思考ができて、アウトプットを出すような人材を作り上げないといけない。なんでグローバルで勝負するために論理的思考が大事か、というのは今回は省きますが、少なくとも欧米諸国では当然のこととして教育制度に組み込まれています。アメリカだと、小学校に上がるかどうかという時期に、すでにディベートを訓練する。日本が、全く同じことをするのがベストかと言われるとそれは分からないですけど、少なくとも、論理的思考を身につけさせるための教育を施す、という観点が今は全く抜け落ちていると思うので、そういう観点で基礎教育を補強する必要があると思います。