採用力。

トヨタ工場見学に行ったときのこと。今の大きな課題の一つは、「良い人材の獲得と維持」との事でした。現在、インドの自動車業界は拡大の一途を辿っているので、工場のライン担当から、技術職まで、労働力需要も高い状態です。しかし、インド人からすると、(インドカスタマイズされているものの)日本式の工場での研修、そして勤務は、やはりハードで、比較的多くの人材が入ってくるものの、音を上げてやめてしまうケースも多い、との事。さらに、技術職に関しては、本来は大学でエンジニアを専攻した人を採用したいのですが、優秀なエンジニアは、給料がいいソフトウェア業界に行ってしまうために、獲得が非常に難しい、との事でした。
いつの時代、どんな業種でもそうですが、「採用力は、競争力」という言葉は当てはまると思います。採用力=高い能力の人を数多く採用する能力、とすると、次のように分解できます。
採用力=求職人数×高い能力を持っている人の割合×当該企業を知っている確率×当該企業に応募する確率×入社試験に合格する確率×実際に入社する確率
それぞれの要因について、確率を上げる方策を考えてみようと思います。
①求職人数
 → 基本的にどうしようもないですね。
②高い能力を持っている人の割合
 → これも、どうしようもないですね。ただ、トヨタであれば、自社で学校*1を経営し、高い能力を持つ人材を開発しています。
③当該企業を知っている確率
 → 知名度を上げればいいので、これはPRを的確に行うことで上げることが出来ます。一般的な知名度で言えば、広告を打つ、ホームページを開設する、という方法がありますし、採用に絞れば、転職、就職サイトに登録する、会社説明会を開く、大学などで寄付講義を行う、などの方法がありますね。
④当該企業に応募する確率
 → これを上げるためには、当該企業が如何に魅力的であるか、入社するとどれだけの徳があるか、を的確にアピールする必要があります。待遇のみならず、当該企業の会社理念、事業内容、経営方針、人材育成方針、キャリアパス、を明確にしたうえで、広く公開する必要があると思います。この情報を、求職者の観点で、的確に公開している企業は、比較的少ないのではないでしょうか。
⑤入社試験に合格する確率
 → これは、上げればいいと言うものではないですね。的確なふるいをかける必要があります。面接官の能力が大きく左右する要因だと思います。面接官には、定量的な指標で応募者をチェックしてもらうだけではなく、会社の求める人材像とその応募者がマッチするかどうか、を見極めるだけの力が必要でしょう。なので、企業は、社員が面接官を行う前に、きちんと研修を行い、的確かつある程度画一的な面接能力を備えさせることが必要でしょう。
⑥実際に入社する確率
 → 合格した人が、逃げないように。しかし、ここであまりにも拘束をしてしまうのは、逆にイメージを悪くしてしまいます。一般的に、入社試験に合格した人が逃げてしまうのは、1.ほかの会社が第一志望だった、2.本当は当該企業が第一志望だったのに、入社試験の実施、および結果発表時期が遅いために、ほかの会社を待たせ続けることができず、しかたなくほかの会社に入社、というケースがあると思います。1.に関しては、試験前、および面接試験での、当該企業のアピール力を上げるしかない。2.に関しては、入社プロセスを改善して、できる限り早い採用プロセスを確率する、と言う方法があると思います。
このトピックだけで、一冊の本が書けてしまうほどなので、とても表面的な分析ですが、こんな感じでしょう。ただ、採用力、というとよくわからないものが、こういう要因分析をすることで、どういうアクションを取ればいいかが明確になります。数値的分析、対策が打てるようになるので、有益だと思います。