コートジボワールの反体制派が中心都市アビジャンを実質掌握か

コートジボワールでは昨年の大統領選挙以降、大統領が二人存在する異常な事態が続いていたが、反体制派が首都ヤムスクロ及び中心都市アビジャンに進軍し、政府軍が警護していた国営放送局を掌握。軍参謀総長が亡命を求めるなど、状況が急展開を見せている。大統領選後、現時点(日本時間4月1日14時半)までの状況をまとめておきたい。

コートジボワールでは、昨年11月28日に現職バグボ大統領と野党党首ウワタラ氏を候補とした大統領決選投票が実施され、選挙管理委員会はウワタラ氏の当選を発表。しかし憲法評議会が公正な選挙が妨害されたとして一部投票を無効とし、バグボ大統領の当選を発表。12月4日には双方が大統領として宣誓をし、2つの政権が存在する異常事態に陥っていた。

国連、欧米諸国、アフリカ諸国を含めた国際社会は、選挙は概ね公正に行われたとして、選挙管理委員会の発表どおりウワタラ氏の当選を支持。一方でバグボ大統領側は投票行動の妨害などがあったと主張し続けている。

国際社会は、バグボ大統領が辞任する意向が無いこと、またウワタラ氏側への武力による圧力を受けて、バグボ大統領と親族・側近に対する渡航禁止命令、資産凍結などの経済制裁を立て続けに実施。特に、西アフリカ諸国の共通通貨を発行・管理している西アフリカ諸国中央銀行は、バグボ大統領によるコートジボワール政府資産へのアクセスを禁止し、バグボ大統領配下の軍隊、公務員への給与支払い能力を低下させる。

ウワタラ氏は大統領命令として、バグボ大統領の資金源であった、カカオ豆の輸出を禁止。これに対してバグボ大統領はカカオ豆流通・輸出業務を国有化すると発表するなど、同国の主要産品であるカカオ豆をめぐって事態は混乱を極めていた。

1月に西アフリカ諸国中央銀行コートジボワール国内での業務を停止したことにより、資金流動性が枯渇し経済が急減速。物資が不足し物価が高騰。同国の燃料供給を行う石油公社も資金繰りが出来ずに原油が輸入できなくなり、結果として同国内でのガソリンを含めた燃料不足が深刻化する。両候補間の武力衝突による治安悪化も受けて、2月中旬には同国に進出する外資系金融機関は軒並み営業を停止するに至る。

政治・経済の停滞や武力衝突など国の情勢が極度に不安定化していたものの、バグボ大統領は、平和的解決を望むアフリカ連合、西アフリカ諸国連合からの度重なる政権移譲要請を拒否し続ける。

平和的解決への糸口が見えない中、同国北部のウワタラ氏を支持する反政府武装組織「新勢力」軍は2月24日、バグボ大統領支持者の支配地域であるコートジボワール西部へ進軍。その後、首都ヤムスクロ、中心都市アビジャンに向けて進軍を続けた。

対するバグボ大統領側は3月19日、大統領支持団体である「若き愛国者」に対して、対抗勢力の武装解除を目的とした実質的な武装を指示。5,000人の若者が民兵として加わり、アビジャンでは極度に緊張感が高まっていた。

進軍を続けていた「新勢力」軍は3月30日、政治首都のヤムスクロを掌握。この時点で、政府軍はヤムスクロでは展開しておらず、速やかな掌握に至ったとされている。

同3月30日、政府軍のマングー軍参謀総長が在コートジボワール南アフリカ大使公邸へ家族を連れて亡命を申請。これを受けてウワタラ氏は政府軍の他の支持者に対して、これ以上の国の混乱を招かないよう、バグボ氏から離反することを求める声明を発表。これまでに、警察、憲兵隊の一部がウワタラ氏側に寝返ったとされている。

ウワタラ氏を支持する「新勢力」軍は3月31日、最大都市アビジャンに進軍し、政府軍と激しく衝突。翌4月1日にはこれまでバグボ政権軍が警護していた国営テレビ局を掌握。大統領公邸にも攻撃を行っている。

バグボ大統領は依然として大統領公邸に立てこもり、「若き愛国者」の数千人が大統領の護衛についている模様。

バグボ大統領側は投降する意志を表明しておらず、速やかに大統領の座を明け渡すとは考えられないとする専門家が多い。ウワタラ氏側の報道官によれば、バグボ大統領は本気で神に守られていると考えているので、ゲームオーバーになることは想定していないと思う、と語っている。

一方で、バグボ大統領を支持していた軍隊、警察、憲兵隊が離散しつつあることを考えれば、バグボ大統領・親族の身柄の安全が保証されるような取引があれば、事態の収束にはそれほど時間がかからないものと考えられる。