墨攻

昨日、川崎で見た墨攻ですが、結論から言うと、まあ普通に面白かったかなと。個人的に一番ヒットしたのは、主人公の孤高さです。とんでもなくカッコイイ。

(以下、ネタバレが一部入ります)

この映画は、墨家の革離という戦略家が、国力の小さい梁という国を趙という国から守る、というのが大雑把な話。

革離は、墨家という思想集団兼武闘集団の一人であり、要請のある国に対して、軍事的な援助を行います。今で言えば、フリーの軍事コンサルタントに該当します。ただ、墨家の思想と言うのは、平和の希求であり、軍事的な援助を行いつつも、平和の大切さを説いていく、という矛盾した一面もあります。

話は、革離が梁を趙からの度重なる攻撃から守り抜く中で展開される、革離の戦略の巧妙さ、革離の孤高さ、効率的な殺人を行う一方で平和を願う心の間の苦悩を中心に描かれています。また、こういう外部の助っ人が入ってきてうまくいってしまう場合に、元々の国家元首からの嫉妬を招き、結果としてあらぬ嫌疑をかけられる、というのはよくある話ですが、今回もそれはバッチリと入っています。その辺りの内紛とか、フリーのコンサルタントという立場ゆえに、国や個人に肩入れできないと言う思想と、それに反する恋愛感情の間で揺れ動く心の苦悩についても描かれています。

個人的には、革離の孤高さ、革離の戦略が嵌ることの痛快さ、ヒロインが場面を重ねるにしたがって、着実に艶っぽくなっていくという意味不明な展開、が面白かったですが、印象的な科白が二つほどありました。

(梁の幹部から「あなたは、もし趙に助けを求められたら、助けるのですか?」と聞かれたのに対して)
「助ける。要請があれば、私はどこの国にも助けに行くだろう」(by 革離)
→ 自分が将来的になりたい像だー、と思って勝手に同一化してしまいました。

(革離が、梁の首脳から裏切られたのを見て、趙の幹部が)
「革離は負けたのです。戦争に勝つための戦略はできても、人民の心の本質をつかむことが出来なかったのです」(by 趙の幹部)
→ 戦略の実施には、あらゆるステークホールダーの心理的な側面に十二分な配慮をしないといけない、という教訓
→ 現代の、経営コンサルティングにも完全に当てはまるところが自分にとってヒットでした。一部の幹部役員から請け負った仕事で、成果を出すための戦略を練って、実行してみたものの、社内の反対派の大攻勢にあって、頓挫してしまうことがいかに多いか。。。組織のチェンジマネジメントには常にあらゆる関係者への根回しが必要であることを再認識。

シナリオとしては、かなーり分かりやすい展開なので、安心して観れますが、その割には学びが多い映画だと思いました。