日本の電機産業再編へのシナリオ

読んでみました。

日本の電機産業再編へのシナリオ―グローバル・トップワンへの道

日本の電機産業再編へのシナリオ―グローバル・トップワンへの道

筆者の主張は、以下の通り。
・現在の日本電機産業の利益率はきわめて低い。
・しかし、技術はある。
・したがって、外国企業に買われてしまい、技術が日本に残らなくなる。
・それを防ぐために、再編が必要。
・再編の方法は、各電機大手の事業単位ごとに会社を作る。
・こうすることで、規模の経済が効いてきて、競争力強化となり、日本の企業が買われることは無い。

で、それに対する、私の感想は、以下の通り。
・全体として、筆者の言う再編はしたほうがいいと思う。今の日本企業は、はっきり言ってダメダメすぎる。したがって、賛成。
個別で見ていくと、以下の通り。
 ・現状認識は、賛成。その通り
 ・しかし、外国企業に買われてしまうことが、そんなに悪いことなのか?
  ・就業者の立場からすれば、働く場所が違うだけ
  ・消費者の立場からすれば、よりよいものがよりやすく手に入る
 ・再編により、競争力が強化されるのは、一部では賛成

ということで、まずは、腑に落ちない2つの点について簡単に書いてみます。

1.「日本」企業が残る必要があるのか?

逆に、「日本」企業がなくなると、どうなるのか?
困ること、あります?あまり無いと思うんですけど。
国という単位が、既に意味がない気がします。
この前のBlogで書いたとおり、IBMはグローバルでリソースを最適化しようとしてます。
それによって、誰が困るかというと、基本的には誰も困らない。
より競争が激しくなるから、企業としては大変だけど、それはあってしかるべき競争だし。

ということで、この点に関しては、私は、特に気にしなくてもいいんじゃないか、と思ってます。
ただし、この本全体の、大前提にもなってるので、とりあえずそのことは忘れながら読みました。。。

2.再編により、競争力が強化される
規模の経済の効果として、以下の点を挙げています。
 大規模投資を可能にする
 研究開発を集中させる
 もちろん、コスト優位性もある
それぞれの点に関しては、賛成。
ですが、結局、生産拠点は、海外に移ることになるでしょう。コスト優位性がある以上は。
そうなると、結局、技術は海外に出て行くわけで。。。
1.の日本企業がなくなるのが困る、と言っている理由の一つとして、筆者が何度も言っているのは、「日本から生産拠点が無くなって、日本から技術が流出する」ということですが、これは、再編しても結局同じことになると思うわけです。なので、この点に関しては、反対。
まあ、それでも、この再編が出来れば、大幅に競争力という意味では上がるとは、思います。

こんなところが、概観。

あとは、気がついた点を、ぱらぱら書きます。

日本の企業が営業利益率を高く保つためには、以下の外的要因が必要
・日本よりもコストの高いところが残ってる
・日本よりもコストの低いところが参入していない
・日本国内の競争が激化していない

大手電機 3.2%
自動車 7.9%
素材 9.8%
精密・印刷 9.8%

→ なるほどーという感じ。納得。

ワーストシナリオ1:大手電機が買収された後、分割され外国企業に売却
「外国企業に売却されても、日本国内の製造拠点や研究開発拠点がそのまま維持発展されれば問題ない。」

→ なるほど。それでは、外国企業に買収されること自体は悪ではないわけね。

日本はインフラや人材のコストが高いため、徐々に製造拠点の海外移転が進むことが考えられる。また、買収した外国企業の収益が悪化すれば、コスト高の日本の製造拠点が、一番先に工場閉鎖に踏み切られてしまう可能性が高い。

→ これは、グローバル・トップワンになっても、同じことが起こるのでは?結局は、コスト優位性に依存するわけだからさ。

ワーストシナリオ2:個別事業単位で外国企業と提携し、技術と市場を失う
外国企業との提携がある程度成功すると、その成功した状況を維持するためにさらに提携関係を深めざるをえなくなる。すなわち、日本企業がそれまで国内に蓄積してきた技術を外国企業に次々と提供して、製品のレベルアップに貢献しなければならなくなる。他方、自社内では出来るだけ余分な経費を発生させないようにするため、独自の新たな技術開発や製品開発は極力押さえることになる。
そして、このような状況が続けば、過去から日本企業に蓄積していた技術・ノウハウは次々と外国企業に流れてしまうだけでなく、新しい技術の蓄積も少なくなってしまう。

→ 提携したら、相手からの技術も入るのでは無いのか?というか、日本企業、外国企業、ともにア新たに技術を蓄積して、流通させることになるだろうから、新しい技術の蓄積が少なくなる、ということは起こらないのではないか?

提携をして、提携先に技術供与をしているうちに、提携先に「喰われる」。

→ ガバナンスが効いていない、というだけの問題でしょう。
→ だからと言って、提携してはいけないというのは、おかしい。(これは、筆者が自分で本の中で言っている)
→ だからこれを再編の理由にするのは、おかしい。
→ グローバル・トップワンになったって、提携はするだろうし、提携したときのガバナンスをきちんと効かせることが出来なければ、同じように「喰われる」であろう。