知的財産指標

昨日付の日刊工業新聞に知的財産指標の策定を6月までに行い、企業への採用を求める、という記事が載っていました。
要は、現在公開されているような財務指標だけでは、企業の正確な力はわからないでしょう、と。企業の潜在価値を測るためには、ほかの財務的な観点以外の観点も必要なのではないか、というわけです。
今までであげられているのは、以下の観点のようです。
(1)経営哲学の浸透度合い
(2)経営の選択と集中状況
(3)交渉・説得力
(4)研究開発や知財力などの知識の創造力
(5)チームワーク
(6)リスク管理体制
(7)社会との共生

それぞれについて、指標(たとえば、「社員の経営方針認知度」のようなもの)を設けて、測定してもらって、公開するように求める、とのこと。

思いつきとしては悪くないと思うのですが、どうやって測るんだろう、とか、交渉・説得力、チームワークって、会社全体で測れるものなんだっけ?とか、選択と集中のように、ある同じ事象を捉えても、人によって意見が分かれてくるもの(一つの事業に絞っているという事象を捉えて、「経営資源を的確に集中させている。」とプラスに捕らえることもできるし、「一つの事業に依存してしまうと、市場の縮小に対するリスクも高く、成長機会も小さいため、よくない」とマイナスに捕らえることもできる。)は、どうやって判断するんだろう、と疑問をあげれば枚挙に暇がないです。

そもそも、誰が測るんだ、これ?

あと、これが審議されている知的資産小委員会という委員会の議事録を読んだのですが、意味不明な箇所多数。

企業価値というものにつきましては、時価総額で見た場合には企業側にとって十分な評価が得られていないことについて不満があり、市場の認識との間にギャップがあるわけでございます。

???
「『知的資産』のようなものが評価されていない」から、「本来の企業の力と比べて、株価が低く評価されている」、と想定しているようなのですが、そうなんですかね?
もし、企業の「知的資産」を正当に評価してほしいのであれば、それが投資家にわかるように説明を行うのは、明らかに企業のIRの観点での自己責任でしょう。それも含めて株価は形成されているのだから、決して「十分な評価が得られていない」とは思いません。
「不満」があるなら、わかるように開示しろよ、というだけでは?

あと、メンバー。「小」委員会なのに、多いです。

 武田薬品工業株式会社常務取締役・知的財産部長
 日産自動車株式会社知的資産統括室長
 日本経済団体連合会産業技術委員会
  知的財産部会部会長、凸版印刷株式会社専務取締役
 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科経営学部教授
 明治大学グローバル・ビジネス研究科長
 フィデリティ投信株式会社取締役副会長
 NTTコミュニケーションズ株式会社プロセス&
  ナレッジマネジメント部知的財産部門担当部長
 専修大学経営学部教授
 中央青山監査法人事業開発本部知的財産室
 全国消費者団体連絡会事務局
 株式会社アイ・アール・ジャパン代表取締役
 あずさ監査法人代表社員・知的財産戦略室長
 新日本監査法人代表社員
 株式会社資生堂IR部長
 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授
 株式会社アクセル代表取締役社長
 日本政策投資銀行政策企画部長
 岡谷電機産業株式会社取締役社長
 株式会社日立製作所経営企画室副室長
 厚生年金基金連合会年金運用部副調整役
 モルガン・スタンレー証券株式会社マネージングディレクター副会長
 東京大学大学院法学部政治学研究科教授
 イオン株式会社コーポレートブランディング部マネージャー
 株式会社東京証券取引所常務取締役
 富士ゼロックス株式会社専務執行役員
 オブザーバー 日本規格協会標準部認証規格課
         日本労働組合総連合会総合政策局経済政策局
         金融庁総務企画局市場課企業会計調整官
         日本機械輸出組合企画開発グループリーダー
         社団法人日本経済団体連合会環境・技術本部主事

なぜみんな大企業&学者&役所???
このissueで一番困っていて、かつ恩恵を受けるべき、「本当は力があるのに、正当に評価されていない」中小企業が入っていない?
このレベルの参加企業なら、ブランドエクイティもあるし、「十分な評価」を受けていると思うんですが。

さて、仕事にもどりますか。